F-16A
Fighting Falcon Esci 1/72
先輩:よ
うやく夏本番です。しかし梅雨は明けたというのに雨が多いですねぇ。天気予報はどうなっているのでしょう・・・?
私:おコンニチハ!おコンニチハ! カリフォルニアドリ〜ム♪
先
輩:不審な人型ロボットが来ました。とりあえず破壊しましょう。大型ハンマーは何処ですかね。
私:ちょいっ〜すッ!おや?珍しく今日
は読書ですか。どうせくだらねぇギャグマンガでしょ?
先輩:失礼な。推理小説、「ぶっ翔んでる警視正」ですョ。いつも通り、君を抹殺する計画を練っていました。
私:そのサイズの本て、最近あまり見ませんねぇ。 どこのゴミ箱から拾ってきたんですか?
先輩:どうやら奥多摩湖に沈みたいようですね。深いですよあそこは。で、今日は何用です。草刈りにでも来まし
たか?
私:今日は久々の
現用ジェットです。エッシーのF-16、ご存知ですかぁ?コレ。
先輩:おぉ、ESCI。かつてイタリアに存在
したプラモ・メーカーですね。知ってますョ。昔、グンゼ産業(クレオス)やハセガワ、ツクダなどが代理店になり国内に流通させていましたっけ。
私:ニョホホホホ。これ、F-16を良く手掛けるオイラとしては「必ずや作ってみたい」憧れのキットだったんスよ( ^ω^ )。子供時代に買おうとしたけど値段がハセガワの倍ちかくしたから、ためらっていたらいつのまにか倒産しちゃったでしょ?
長い事マボロシのキットだったけど、ヤフオクでたまたまめっけてソッコー落札ッスよ。ヽ( ゚∀゚ )ノ シャッ!!
先輩:ふん、君がこれに目をつけるとは。 しかし多少の”目利き”は出来るようですね。
このF-16はね、決定版が多いとされているエッシー1/72シリーズの中でも珠玉の名作の一つと云われているのです
よ。「F-16マニア」を公言するモデラーでこれを知らない人はニワカかモグリといっても過言ではないでしょうよ。
私:へぇ、そんな
有名なんスか。古いのに。
先輩:実機F-16はデビュー時から大変話題
になった人気の機体で、それにあやかろうと国内外プラモメーカーの多くが「キット化先陣争い」したんです。しかしお約束の青田刈りが祟って、ほとん
どがYF-16とかFSD(YF-16A)でした。そんな中、キチッと量産仕様を再現したキットとして、特にハセガワ発売前などは大変に重宝がられたのですよ。
私:おおっ〜!。この上品な凹モール
ド仕上げ、やっぱただモンぢゃなかったんだぁ! 私、世代的に先輩方ほど「舶来キット」信仰は無いのですが、エッシーだけは別腹ッスよ(≧∇≦)!!
先輩:80年代は精密さや正確さをストイックに追及する風潮があり、キットに対する評価がとても厳しいものがありました。発売直後は大絶賛されたキットでも、ミスが露
見するや数年で引退なんて事例もあったと聞き及びます。そういうシビアな80年代スケールモデル界において、なお激賞された
キットなので
すよ、コレは。
私:要するにチョー辛口の模型誌ですらベタ褒めした伝説のキットってことですね!こりゃワクワクするぜぇ
〜。もしポシャったらゴメンちゃいね。てへっ (・ω<)。
先輩:アハハハ。プラモは趣味です、気楽にやりなさいョ。完成は必達なんてことはありません。不測の事態や失敗だってあるでしょう。しかし「そ
れはそれ」。製作記やキット評を外部に公開するなら話は別。自分から言いだした以上、下手でもいいから完成品を出さねば世間は納得しませんよ。まして放り出したキットの製作記を人に見せるなど如何なものかと。君の意見はどうですか?
私:・・・ギギギギギ・・・判りましたから、とりあえず首絞めるの、止めてくれ
ます?
教訓:うっかり”〇〇を製作中”などと吹聴すると完成するまで一生突っ込まれる。
注)この製作記にはフィクションが含まれています。
〜製作開始〜
私:今回のキットっす。1983
年製ですね・・・ってナニ?この箱絵??絵自体もあまり上手くないけど・・・オランダ空軍機の背後でイスラエルとノルウェーって・・・設定がそもそも変っ
スよね。もっとこう、現実と商品内容の狭間でもだえ苦しむ絵師のやるせなさ、ジレンマ、懊悩など、見るものに訴えかける”画力”が欲しいですねぇ(* ̄m ̄ )。
先
輩:なに絵画通ぶっているのです。美術の成績悪かったくせに。フツーに見なさいよ。これがエッシーの”あかんたれ”なところです。ボックスアートに関してはイタレリの方が一枚上。ただしエッシー末期のF-
15Bの箱絵は素晴らしいですよ。写真と見紛うばかりです。
私:「あかんたれ」といえば、志垣太郎もあの頃は若かったっスよねぇ・・・(遠い目)。
私:でわでわ、その中身をみてみましょうか・・・おおお〜!!シンプルで作り易そう!モールドは銀かぁ。珍しい! ほう、イタレリ、フジミと同様に背中を割っ
て複座に対応してんのかぁ。おっ、ドラッグシュートも別パーツ、ハセより気が利いてるなぁ。
先輩:石原肇 氏の「飛行機プラモマニアの基礎知識」によると、凹モールドを基調とする現在の飛行機プラモの定型はESCIが先鞭をつけたのだそうです。実
際、やや遅れて83年、84年頃にハセガワとフジミは凹線に切り替えてます。これが飛行機プラモの分岐点の一つといえるでしょう。なおキャノピーはΩではなく∩ですが、72ではこれで十分です。
私:デカール
は・・・NATO4か国と米軍、イスラエルですね。6種類とはこりゃ豪勢だぁ。「スーパースケール出番無し!」ってところですね。
先輩:モ
デライズされたのはおそらくF-16Aでも初期型の「ブロック10」。実機
ブロック10だけでも都合400機以上生産、配備されており、ちょっとした勢力ですョ。対地攻撃能力を強化したブロック15以降と異なり、純粋に小型軽量戦闘機としてのF-16本来の姿を味わうならこのタイプでしょう。かの「バビロン作戦」もこれ。IAFファンなら是非おさえたいです
ね。
私:もっと良く見てみましょうよ。クオオオォ・・・!!ほれぼれする程の筋彫りだぁ。眩しすぎる・・・。これほど極細で深いスジ彫りは、後発のハセガワやドイツレベ
ルところか最新のタミヤ72とでもいい勝負できますよ!! やるなイタリア人!
先輩:国籍こそイタリアですがほぼ日本人の仕事で
すよ。ESCIの
1/72はね、設計から金型製作まで日本に外注したといわれているのですよ。だから生粋のイタリアンではありません。ところが皮肉なもので、エッ
シーで「傑作」と評判の高いものは日本製金型のキットが多いのですよ。
私:ちなみにハセガワ1/72はこうっス。こっちの方が気持ちやや太めかなぁ。彫りも少し浅いかもしんない。
先輩:一般論でいうと”第一印象”は重要です。工業製品などの場合、仕上げを見ればメーカーの商品に対する姿勢がおよそ判ります。しかしプラモの場合、その「公式」が通じないケースが多いのです。例えばイタレリ。細部のモールドはだらしないけど完成するとビシッと締ま
るでしょう?ここがプラモの不思議なところであり、面白さですョ。
私:なんだこれ・・・( ゚O゚ )。 主脚支柱なんて抜けてんじゃん。1/72でここまでやるかァ・・・金型師さん気合入れすぎ。
先輩: これは当時のMAライターさんも驚愕していま
す。もっとも、写真でみる実物はもっとゴツいですよ。ここまでホネホネに抜けてません。正直ハセガ
ワの方が正確ですね。ただし「精密感の演出」という意味で非常に効
果はあります。
私:そういや、F-16って、生産ブロックごとの違いや、その後のアップデートが激しくて”モデラー泣か
せ”っていわれてますけど考証的にはどうなんですかねぇ?これ・・・。
先輩: 前述の通り、このキットはたぶんブロック10ですね。いちおうMSIPステージT(ブロック15)との違いを調べましたが、ほぼ素のままで良さそうですよ。極初期型の特徴である小型の水平尾翼や垂直尾
翼基部、アンテナ類(赤矢印)などポイントは抑えられています。唯一のミスはレドーム中央真下の電撃防止帯
(青矢印)が一本余計な事くらいでしょうかねぇ・・・。
私:でわでわ。さっそく切り出すぜぇ!伝説の超キット、燃えてきた〜!!!うぉぉぉぉおおおおおお〜!!!
(ドンドンドン)
先輩:落ち着きなさい。 尖っている部分はと
りあえずテープで保護しなさいよ。君の手足にブッ刺さるぶんにはむしろ大歓迎ですが、落として欠損する方が心配です。
私:切り出し完了〜。あっという間に終わっちった。こりゃ大戦機レベルだよね。
先輩:72はこれ位シンプルなのが一番ですね。無くさないよう仕切り箱にでもしまいなさいよ、ところで君、パーツの脱脂洗浄忘れましたね?
私:やべっ!ど忘れこいた!・・・あとで胴体内側で塗料弾くか確認します(´・ω・`)。
私:よぉ〜し、コクピットだぜ。・・・ってありゃ・・・シートのお座
部がヒケてる。
先輩:フ
ロアだけ先にやっつけましょう。シートは後で何とかなりま
すよ。最後でもOKです。
私:胴体を組むぜ。まずは背中を
乗せて、コクピットと脚庫隔壁を挟んで、上下合体!!・・・・って、しまった!・・・オモリ入れ忘れてもうた! あだばばばばばっ・・・・のっけからやっちまった!
先輩:焦りましたね?しかしインストにオモリの指示などどこにも記していませんよ?過去の模型誌作例でもそれらしき記述はみあたりません。シリモチついても最悪、後でエアインテークの所から仕込
めますよ。
私:擦り合わせで消え
たレドームの電撃防止帯は赤の伸ばしランナーを貼って再現しましたよ。
先輩:伸ばしランナーの断面は基本、丸棒です。細い
ように見えても塗装すると意外と太く見えてしまいます。それを見越して超極細で十分ですよ。もっとも、ムニュ付けではみ出た「ムニュ」をそのまま電撃防止
帯にすれば良いのですが・・・もう削ってしまいましたか。
私:胴体の継ぎ目処理も終わり〜。ん〜、胴体後部の割りはハセガワのほ
うが好みかな。でも合いが良いからOKOK♪。
先輩:割りに関していうならば32や48でならしたハセガワの方がやはり一日の長がありますね。
私:よし。主翼取
り付け・・・したんだけど、ほんの少しだけスキマがでましたね。おっかしいなぁ、バリ処理面取りしたのに。
先輩:エポキシ接着剤擦り込んでしまいなさい
よ。数分で終わるでしょ?
私:塗装だぜ〜。F-16の迷彩
は慣れているっすよ。今回は少し大雑把にしちゃおうかなぁ?最近は絵画調で塗るのがトレンドだし♪
先輩:おろか者ッ。あれはキャリア何十年という
プラモ上級者の方が「意図するところがあって、あえてユルく作っている」のです。それ位見破れなくてどうするのです(#^ω^)。
ちなみにF-16の塗装は3色迷彩の場合、
下面C308→上面C305→側面C306の順がやり易いですよ。レドームは、ここが一番迷う色なのですが、ツヤはともかくC317が近そうですよ。イタレリ48のインストではそうなっています。
私:細部塗装も終わったぜ〜。小さいわりに意外とめんどくさいのよ
ね・・・これ。
先輩:それは他の機種でも一緒でしょう?少しずつでも進めて行けばいつか終わりますって。
私:せっかく彫り
の深いスジ彫りなのだからたまにはスミ入れしてみっか〜。
先輩:物にもよりますが、これはスミ入れした方が少
し締まりますねぇ。けどやりすぎると台無しになるからホドホドにしときなさいよ。
私:デカールは、ここはシンプルに474thTFW
428thTSFのAF79-0368でいくかぁ。
先輩:www.f-16.netのデータベースだと
ブロック10Aですね。MG増刊にもカラー図がありますがブロック
15で描かれています。これは参考程度に。デカール乾いたら半ツヤのクリアーで整えておくのですよ。まあ好みでツヤ消しでもいいですが。
それとね、「資料」の類は補助程度に考えておいた方が良いですよ。調べ出すとキリがありません。
私:小物類も仕上
げが終わったぜ〜。ふ〜、ウェポンが多くて大変だった。
先輩:ところで君、パイロンSta.3A、Sta.7Aの搭載兵器は選択式ですよ?Mk.84とスマート爆弾、どちらを搭載するのです。どちらかは余りますよ?
私:ゲッ!そうだったんスか? そうと知ってりゃどちらかしか作らなかったのに(´・ω・`)。 こりゃまたウッカリ!
先輩:まーた、無駄な事をしましたね・・・。良くインストを読まないからです。
私:小物類を取り付けて・・・と、いっちょ上がりッ ヽ( ゚∀゚ )ノ。
〜完成〜
私:ふぅ〜、やっと終わった〜。
先輩:
(コポコポコポ・・・) で
きたようですね。ご苦労様です。今日は蒸しますね。まあ、一杯やりなさいよ。
私:おっ、ビールですね?頂きま〜す。では完成を祝し、カンペェ完平ェ〜!!。・・・・にゅわわあっ・・・・・甘ぇえええ(´Д`;)
先輩:
「こどもびいる」ですよ。君は酔うとブンドドして壊しそうですからね。どれ、完成したのを見せてみなさいよ・・・ふん、可もなく不可もなし。凡人の凡才に
よる凡作ですね。で、どうですか?憧れのキットを作ってみた感想は。
私:今どきの国産キットと比べても遜色ない出来ですね。合いも良いし、主翼もシャープで言う事無しッス! 初期型なら今でも決定版の一つかも。評判通り、こりゃあ良いキットだぁ〜。これほどのものが1983年に出たなんてオドロキっスよ!!
先輩:ではイタレリ72と比較してどうですか?あちらはモールドもヌルいし、省略も多い。パネルラ
インは間違いだらけだし、合いもラフですよ? あれこそ真正イタリアンです。
私:うーん、あれはあれで気楽というか、出来のヌルさが何かいいんスよねぇ。考証とかうるさい事気にせずババッと作れるし。パリッとしたエッシーとは別の良さですね。プラモとしてはどっちも有り。
実際作った者の意見としては、イタレリは「買
わなくていいキット」だなんて思いませんよ。ぶっちゃけ、遠目に見れば大して変わんねーし。
先輩:イタレリはパーツの見た目で損している
部分ありますよね。ただ物としてはESCIの方が上でしょう。流通期間はわずか数年でしたが、この精巧な仕上がりでファンの記憶に長く残ることになるのです。他にはエレールやエアフィックスなども有り
ますよ?これを機にフルコンプなどどうです?
私:勘弁してくだせぇ・・・
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私:しかしこんな
に出来が良いのになんで絶版なんだろ?・・・出せばまだまだイケんのに。
先輩:旧ESCI社のキットは同社倒産後は米AMTに金型を引き取られ、また一部は
かつての同郷ライバル、イタレリに移籍して再販されています。一方でダブりアイテムのF-4やF-15などは再販されていないのですよ。僕の推測だけどAMTに残留しましたね。近年、旧ESCIの1/72
ト
ム猫がAMTから再販されました。
私:入手性が悪い
事以外、名作の条件は満たしていますよね。激辛80年代模型誌が褒めただけの事はあるッス。
先輩:あの時代はスケールモデリングに向き合
う姿勢に厳格すぎるところがあったと思います。ケレン味あるキットやモーターライズは冷遇されましたからねぇ。しかし一方で決定版や傑作と言われるキットが
多く出たのも80年代なのですよ。
私:しかし今回はギャグ成分少なめでしたね。
先輩:僕
はいつだって真面目ですよ。君がおチャラけているだけです。もっと真摯に取り組みなさい。
私:・・・そうは言いながら、後ろに何か隠
していますね?先ほどから1/72サイズのダヨーンおじさんがチラチラ見えますよ。
先輩:ただのダヨーンおじさんではありません。正確にはタミヤ模型の「作る前に必ずお読みくださいおじさん」の対抗して僕が考案したキャラ、「作る前にインストを良く読むのダヨーンおじさん」です。。・・・ところでこのキットには一つ欠けているものがあります。パイロットのパーツが無いのですよ。そこで僕から良い提案が有ります。
私:とりあえず遠慮します。お邪魔しました〜。
先輩:こら待ちなさい!ダヨーンおじさんを「空気イス」のままにさせるのですか?待つのだよ〜ん!こら〜(# ゚Д゚)!!!
注)この製作記にはフィクションが含まれています。
2017年8月3日完成。
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