フジミ 1/48 F-14A トムキャット

F-14A  Tomcat  Fujimi 1/48

フジミの1/48 F-14A です。1/72ではありません。ハセガワの1/48でもありません。念のため。

良くあるご質問(FAQ)
Q:今更作る人、いるの? ⇒ A:はぁ? 余計なお世話なんですが。
Q:機首形状が変といわ れますが? ⇒ A:
ふぅ〜ん。そうなんだ。

今回の主旨はあくまで「フジミ1/48 のF-14Aトムキャット」であるからこれで良いのだ。超ベテランキットだし、模型誌 では1/48のトム猫といえばほぼハセガワの作例が主流だから、最近のモデラーさんだと本キットの存在は知らないか、知っていても実際作った人は少ないの ではないでしょうか?昔からあるのに近年は完成作例を見ない不思議なキットです。

本キットの発売は非常に古く、なんでも初版1978年なんだそうです。ハセガワ旧1/72(凸)の翌年ですかね。レプリカ誌87年7月号によると1/48
スケールとしては世界初のF- 14のプラモで、映画「トップガン」公開時には大変に売れて品薄だったとか。その頃はハセガワも発売前で他に48のトム猫といえは旧レベルと旧モノグラム しか存在せず、日本では消去法的に?これが1/48の定番でした。

それほどに売れたキットなら、さぞやネットや模型誌で レビューを見かけそ うと思いきや、これが案外に少なくて一 応、過去の模型誌だと先のレプリカ誌の他に2誌くらい?(探せば他にあるかも知れんが)。某誌増刊の作例 では「機首のアウトラインがトム猫らしくない」などとの理由で旧モノグラムのキットからパーツを大量トレードした製作記事になっています。

この製作記事については、20年以上経った今読み返しても非常に違和感があります。
機 首ならまだしも主翼と尾翼、コクピット足回りまでゴッソリとモノのパーツを移植したのが「フジミのトム猫」って言えるんですかね?仮に言えたとして元の雰 囲気を大きく損ねているのは事実で、正直ガッカリ。一個の作品としては有りかもしれんが、キットレビューとしては如何なものしょうか・・・。

キットの欠点はフジミ側の問題なんだから、ライター氏 が無理に修正するものでもないし、読者としては素性を知る上でストレートに近い方が有難かったんだけど、「アフターパーツてんこ盛り」&「変な部分は徹底 修正する」ってのが80年代〜90年代の模型誌の風潮(※)で、それに嫌気がさ してあえて模型誌を遠ざけていた時期があります。
※こうした実物再現のアプローチも伝統的作法の一つであるから無下に否定する意図は有りません。2015.12.15追記

そんな状況だからこのキットの元の雰囲気っていうか実像が「謎」のキットの一つでした。しかも古いから今の模型誌で はまず取り上げないだろうし、ネットでもこれをきちんと完成させたという報告例はあまり見当たりません。というわけで私にとって、ぜひ一度作ってみたい、完成させてみたいキットの一つだと以前より考えて おり、2015年10月、その疑問に決着をつけることにしました。


製作前のちょっと余談。
このキットは初版は1978年なのだけど、80年代後半にパッケージ をリニューアルしてバリエー ション展開されていたようです。箱がデカくて高級感があったから、少年時代は憧れのキットの一つでした。当時はまだハセガワも発売前で、舶来キットも入手 難だったのでヨンパチのトム猫=フジミが一般的でした。小池絵師がフジミ製品を担当したってのも当時はオドロキでした。今でもたまに再販されてるらしく、 直近では2008年にVF-33とVF-142のキット(限定?)が発売されています。以下に一部を紹介します。


・品番 S-1
・Ⓒ 1987
・デカール・・・
VF-84、VF-41、VF-111、VF-1(ロービジ)
・機首ディテール・・・AN/ALQ-100タイプ、ピ トー管無し。
 
※ブロック85をモデライズしたようです?デカールはブロック90以降ですが・・・


・品番 S-4
・Ⓒ 1988
・デカール・・・VF-84、VF-41、VF-111、VF-1(ロービジ)
・機首ディテール・・・AXX-1TCSフェアリング、ピトー管有り。
 
※デカールは品番S-1と全く同じです。


・品番 不明
・Ⓒ 1988
・デカール・・・VF-21、VX-4
・機首ディテール・・・AXX-1TCSフェアリング、ピトー管有り。
 
※品番S-4のデカール変えです。


・品番 S-3
・Ⓒ 1988
・デカール・・・F-14D試作機のみ
・機首ディテール・・・AXX-1TCSフェアリング、試作機用ピトー管有り。F110ノズル付き。
 




面白いのは、品番S-4のVF-111版のキットの箱絵です。左右逆ながら
品番 S-1のVF-84版の箱絵と非常に似た構図になっています。

良く見るとこのS-4の絵はS-1の絵を左右反転させ細部を手直しした物のようです。さすがの小池絵師も急ぎだったのか、
垂直尾翼の付け根のディテール(赤丸部)を手直しし損なっていて、大変興味深いです。

商業的には同じ絵師によるフジミ製品同士だから特に問題ないでしょう。これが他社製品あるいは他の絵師のサインが入っていたら色々アレかもしれません が。。。




〜製作開始〜




今 回のキットです。ヤフオク経由で某中古プラモ専門店より購入しました。品番S-4の物。今ではすっかり忘れられた感のある本キットも、探している人はそれ なり に居るようで、まれに高額入札が入ります。中古市場でなくても、街の模型店さんなどでもひっそりと棚の奥の方で売れ残っているのを見かけます。

パー ツ構成です。箱のサイズに収めるためでしょうか、胴体と主翼、尾翼は枠から外されてそれぞれビニール袋に入っています。こうした体裁は昔のキットではよく 見られました。ただしゲートから乱暴にもぎ取っているのはいただけない。少し残してもらえると助かるんですが・・・。

その他のパーツです。胴体上下割り&機首は別体で左右割り。エアイン テークと小物 類、それとウェポンが一枠。トム猫プラモのパーツ割りとしては標準的です。 なお機首パーツは凹で、胴体主翼関係はほとんど凸モー ルドです。

※とかく「複雑」と言われるF-14のプラモですが、 一部のキットがそうであるだけで、その他イタレリ48やハセ旧版72など、シンプルで作り易いキットがゴロゴロあります。現用ジェットのパーツ割りは メーカー/スケールを問わず大体同じような割りになっていていることがほとんどで、旧LSの1/144もタミヤ1/32も基本の割りは一緒だったりしま す。








右写真出典:
Wikimedia Commons
「F-14As VF-1 and VF-2 in flight 1987」

デカールです。品番S-1と共通のシート。28cm×19pの大判サイズ。内容としてはVF-111とVF -84のハイビジCAG機とVF-41のSu-22キラー、それにVF-1のモノトーン版の4種類から選べます。当初はVF-84のAJ-200をガルグ レー/白で仕上げようかと思っていたところ、グレーのVF-1が目に止まりました。このマークは・・・珍しいですね。VF-1といえばド派手な赤ラインの イメージがあります。

そ ういえば「赤くない」ウルフパックのトム猫は、他のキットや別売りデ カール、ダイキャスト完成品でもあまり見た記憶がありません。そこでネットで色々とググってみたら上記写真一枚だけが出てきて、なかなか精悍そうな感じ だった のでこれで決まりとしました。これをフューチャーしたキットは珍しいのではないでしょうか?「フジミの48」を主張するには適当な選択です。




まずはコクピットです。シートは一応フェイスカーテンハンドルはパー ツ化されていますが・・・これがまたGRU.MK7A に全然似ていないのです。ここは気にせず小綺麗に塗り分けてしまえばそれっぽくなります。正面パネルとサイドパネルはデカール表現です。フロアはクレオス の C317を吹きました。後席の後ろのボックスは適当に黒でぬりました。まあキャノピー閉めれば判らんでしょう。

コクピットと脚庫を挟んで機首パーツ左右を接着します。ここの合いは良いです。しかし前席と後席の間のD72パーツの横幅が大きく張り出してキャノピー枠 に干渉し、このままではキャノピーが閉じないことが判りました(赤矢印参照)。

キットに多少の問題が有ったとしても一度手を付けた キットです。よほどの理由でもない限り、安易に製作放棄しないのが当方の基本方針です。ここはD72パーツの両サイド をヤスリでガリガリ削り、現物合わせでキャノピー閉状態でも収まるように調整しました。ハイ、解決。次に進みます。



ちなみに本キットの場合、機首の断面形状がオムスビ型が強調されすぎ ており、評判通りの変な印象があります。
見なかったことにしよう。一応レーダー内部 のパーツも再現されていますが、閉じる派としてはここは無視します。

レドームを取り付けました。ここの合いは特に問題なく、自然なラインで繋がるようです。少し隙間が出来ますが、溶きパテかエポキシ接着剤で埋めるので問題 無し。

次に胴体の下ごしらえです。ミサイルランチャーや燃料 タンク取り付け用の穴をドリルで開けます。私はこの作業を良く忘れるので、初期の段階で済ませてしまいます。今回はフェニックス用ランチャー用の穴も開け ます。



エアインテーク上面の「滑り止め」は左側だけ梨地にモールドされています(赤丸参照)。今回は塗装で両側に施したい ので、このモールドはペーパー掛けしてツルツルにしました。

グローブベーンは可動式になっていますが、動かすつも りがないので胴体ラインとツライチの位置で接着、固定してしまいます。

エアインテーク内部は、接着後だと塗装しにくいのであらかじめC315ライトガルグレーで塗装しておきます。
その後、エアインテークを取り付けます。この辺りのパーツの合いは問題無い様子です。



胴体はそのままでは内部がスカスカで上下から抑えると凹んで接着面が 割れそうです。ここは不用になったタミヤエナメルの蓋を「スペーサー」にしました。位置は現物合わせで適当にします。

胴体上下を貼り合わせました。ここの合いも特に問題は無いようです。うん、順調順調。


機首ASSYと胴体ASSYを合体します。下面に大き な隙間が生じますが、目 立たない場所だし、フェニックスのランチャーを取り付けてしまえばさらに隠れてしまうので気にせずエポキシ接着剤でも擦り込んで埋めてしまいます。色を 塗ってしまえばほどんど判んなくなると思います。



主翼は裏表2枚のシンプルな構成です。そのままだと中が空洞になって、抑えた時にぱっくり割れる可能性が あるので、ランナーを適当に入れて補強します。

主翼は可動式ですが、VG翼機プラモのセオリー通り、ピボット部を切り欠いてしまい、塗装後に取りつけられるようにしておきます。

水平尾翼です。ここは胴体後部と合いがイマイチで。大きな隙間が生じます。
垂直尾翼も同様です。計4枚の尾 翼後部をヤスリでガリガリやって胴体形状に合わせ込みます。この辺が昭和のキットなんだよなぁ・・・




そうこうしてるうちに機体の組み立てが大体終わりました。合わせ目を適当に擦り合わせてから塗装に入りま す。

全体をクレオスC315グレーで吹きます。単色だから楽だと思っていたら・・・図体がでかいので2日掛かりました。その後、主翼前縁やエンジン部などの細 部をマスキングして塗装の繰り返しになります。これもまた2日くらい掛りました。

このままでは綺麗すぎるので、スミ入れを兼ねてエナメルの黒でウオッシングを施し、トーンを少し落ち着かせました。個人的に模型誌で良く見るような「ドロ ド ロ汚し塗装」は好みではないので、ザッと拭いて済ませました。凹部だけでなく凸パネルラインも浮き出た感じになり、なかなか良い感じに仕上がったようで す。




デカールを貼りました。ツヤ消しの固いデカールで、マークセッターの効きもあまり良くないですが、ペラペ ラしていないので貼り易いことは貼り易いです。下 地が明るいせいか、シルバリングしてもあまり目立たないようです。ステンシル類は指示が判り難いので、同じフジミの1/72を参考にしました。デカールを 貼って乾燥させたらツヤ消しのクリアーを吹いて全体のツヤを整えておきます。

ウェポン 類です。何か変です。何故かサイドワインダーがスパローより太い(笑)。ハッタリでこのまま使います。当初胴体下にフェニックスを4発、翼下パイロンにス パローとサイドワインダーを1発づつのつもりでしたが、パイロンにスパロー用のアダプターが無いことが判り、急遽フェニックス6発装備としました。 TF30のパワー不足で発艦は無理です。フェニックスも実際は色々とアレなミサイルでしたが、40年前は最強説でしたね。

今回は少しだけ追加工作しました。とはいっても機体背 部のブレードアンテナ2枚追加と、機首右側のセンサー?の自作&位置修正、それと機首左側の迎角プローブの自作といった微細なもの。この程度は 追加工作の内に入らないでしょう・・・。

、
最後に、足回りとウェポン類のパーツを取り付けて、ハイ、完成です。




〜完成〜




完成したフジミの1/48トムキャット。パッと見の印象としては、 思ったほどデカくはないです。もしかしたらファントムやA-6みたいに1/50か?と思い全長を計測したところ、40p強あったから1/48スケールでは あるようです。

組 み立て上の気になる部分としてはコクピットのD72のパーツと、尾翼と胴体の合いで、これはたぶんキットの設計ミスでしょう。今の時代ならまずクレーム& 金 型改修なんだけど。なまじっかユーザーの手で修正可能なだけに、今の今まで放置されているのでしょう。昔はこういうキット が多く、作り手も余計な苦労したもんです。

気になる機首は
確かに、流布してい る図面や写真と比べると「コレジャナイ感」がありますねぇ。1978年当時のフジミ流の解釈、ディ フォルメと思えばなんてことない。これもマジマジと見ていると慣れてくるから不 思議なもんです。 古来より「F-14の機首には悪魔が棲む」と言い伝えられており、どんなに良いキットでもマニアのケチがつくものです。

しかし
当KOZY商店としては、プラモデルは広く一般のファンに親しまれる商品であり、決して一部の超絶名人や偏執的マニアのものでは無 いと考えておりますので、多少ミスがあっても気にせず大らかに楽しみたいですね。

では。

2015年10月31日完成。

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