F-16A
Fighting Falcon Hasegawa 1/32
ハセガワの
1/32 F-16Aです。
1/48ではありません。タミヤの1/32でもありません。正真正銘の、ハセガワの
1/32のF-16です。もっとも、同社のF-16は1/48や
1/72が傑作と名高いのに対し、1/32は存在感の薄いキットです。現用機モデラーでも本キットのことを詳しく知らない人もいると思います。
というのも、本キットはれっきとした現行商品(2013年4月現在)でありながら情報が非常に少なくて、作例は国内ネットで検索しても1〜2件、昨今の商
業模型誌に至ってはまるで無視されていま
す。だからビギナーが模型屋でデカいファルコンのプラモを買おうとしたさい、タミヤと比較して不思議に思う人もいると思います。あるいは話には聞いていて
も、実際手に取った人は少ないのではないでしょうか?
ハセガワの1/32F-16は、もともと同社が
1970年代後半に出したF-16A全規模開発原型(FSD)のキットをルーツとしています。このFSDのキットは
80年代中頃のコレクターズハイグレード版(限定白箱)でA型ブロック15仕様に改修され、さらに89年にC型にアップグレードされたのが現行品番S25
のキットです。大雑把ながらも要所要所は量産型のA/C型になって
いて、全体的には良いキットです。
ただしベースのキットが古いからパネルラインが凸だっ
たり、胴体モールドの一部がFSDのままなのが少し惜しい所で、細部にこだわろうとすると結構な手間かかると思います。それでも2004年にタミヤがブロック50出すまでは1/32のF-16はハセガワとRevellしか無
かったから、でっかいF-16を作りたい人は資料片手に奮戦したことでしょう。
このキット、非常に影の薄い存在で、一応、過去模型誌での作例は、MA誌83年5月臨時増刊、MA誌85年12月号、MG誌88年増刊(アヴィエーション
グラフィックス)、MA誌98年増刊位で、最近のF-
16プラモ特集では製作どころか存在自体も無視されています。模型店の上段に鎮座するあこがれのビッグキットがこれでは面目が立たないってもんで
す。
・・・いや、そんな時こそ当KOZY商店の出番なんですョ。ひとつ作ってみようじゃないスか。
今回の製作方針としてはキットの難点はさておき、ほぼ
ストレートでサクッと作ります。海外モデラーの作品を展示したサイトで
見ると、パネルラインもほぼそのままでも良い雰囲気です。プラモなんて案外そんなものですかね。大らかな気持ちで製作するのもまた結構です。
大物キットだけに少々長い内容になりますが、お付き合い下さい。
製作前のちょっと余談
ハセガワも1/48や1/72の方は今でも良く限定版
を出しているのに対し、1/32には冷淡で、これまで定番限定版合わせて7種類ほどです。
その一部をご紹介します。
製作前に、手持ちのストックでS20のキットと見比べてみました。バ
ルカン砲後部のスリットや垂直尾翼のレーダー警戒アンテナなどはアップグレードされているようですね。良く見れば他にもあるかも。
Kit No.S27のラムシュタイン。生産休止品。デカール以外はS25と一緒の内容です。
隣りは限定08193(2009年発売)。追加パーツとメタルインレット付き。あまり売れなかったようです。
この他、F-16A(S26)とコレクターズハイグレードの限定白箱、サンダーバーズがありました。
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〜製作開始〜
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Box Size
540×330×100
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今
回製作するキット(個体)です。普通にお店で買いました。パッケージのデカさと頑丈さが相まって、ナカナカの貫録。いいなぁ。こういうビッグキッ
トって。大型プラモは何ぞのお祝いとかハレの日を引き立てる、特別な存在なんですよねぇ。作る前からワクワクするなぁ。
ボックスアートは小池絵師による同社1/48のキット(V4)と同
じもの。ただしマーク類は手直ししたようです。まあ同じメーカーならイラスト流用はOKでしょう。それにしても1/48と1/32でこのボリュームの違
い、やっぱサンニイは格が違うぜ〜。
けしからんのはこれ。箱サイド及インストの完成作例写真が、同社
1/48のキットを流用していること。マークを上手くゴマ化したつもりかもしれんが、アンテナ類やスジボリの特徴を見る人が見れば判りますョ。ハセガワさ
んも何やってんだか・・・。同じ機種と
はいえ、違う商品の完成品写真を使うのは如何なもんかと・・・。買う側はこの写真も参考にして買うのだから、正直に本キットの完成品を使うべき。
パーツ構成です。同社の1/72と違い、部品1〜2枚ごとにビニー
ル袋にパックされています。これは良い。ハセガワのキットってパーツ同士の擦れ疵がたまにありますからね。垂直尾翼は2種類。エンジンノズルも2種
類。エアインテイクはNSI型。ってことはブロック15〜32型あたりまでを作れそうです。モールドは一部を除き、繊細な凸。これぞ昭和テイスト。故郷に
帰省したような懐かしい味わいなのです。
パーツの割りは、ハセガワのベストセラーキットと云われる1/48F-16とほぼ同様です。もっとも、1/32の方が先輩キットです。あの傑作1/48はこれの簡略縮小版なんでしょうね。1/32らしくウェポンや内部再現パーツが多いです。これはFSDキット時代の名残りで、不必要なパーツ
が多い。原油高騰の昨今ではちょっともったいない気がします。
シート類はホワイトメタルでパーツ化。80年代後半は、ホワイトメタルやエッチングなど金属パーツを用いることで、やたらに高級感を演出したキットが多
く、この時代のトレンドでした。メーカー側の本音は「金型を起こすのが面倒なだけ」だったのかもしれません。
デカールはテキサスANGのA型ブロック15と三沢432TFWのC
型ブロック30の2種類。今回はテキサスANGを製作します。このデカールはナイス。A型ってのはF-16本来の姿を体現しているようで、C型とはまた
違った魅力あるんですよねぇ。
不要そうなパーツ類は、予めカットしてビニール袋にパック。箱に仕舞って、プチプチを一枚敷くと良いです。
まずはホワイトメタルのACESUを仮組みします。バリが凄いです。
各パーツの寸法もチグハグで合いは悪いです。これはカッターと金属ヤスリでチマチマ削って様子を見ます。メタルパーツは本キットの売りの一つだったは
ずですが・・・なんか釈然としませんねぇ。
バリを処理したら、グンゼ(クレオス)のプライマーをペタペタと筆塗り。このプライマー、かれこれ20年以上前に買ったもの。大丈夫だろうか・・・???
シートの各パーツを塗装して組みます。シート左右の間に0.3mmプラ板を挟んで幅を少し広げました。そのままでは狭すぎて「座布団」と「背もたれ」の
パーツが収まりません。とにかくメタルパーツの寸法精度が悪いです。ここはエポキシ接着剤で数回に分けて、確認しながら組みます。射出ハンドルのトラ縞
は、細切りにした黒デカールで対応。塗装より手軽で綺麗に仕上がります。
コクピットです。インストの塗装指定では、フロアーの色はクレオスの
C317ダークガルグレイの指定。おや??これ確か、1/72と1/48のキットでは
C308ライトゴーストグレイだったはず・・・。一方、MA誌83年増刊ではダークガルグレイだし、レプリカ誌85年7月号ではFS36314・・・・。わけ
が判らんです。因みにタミヤのキッ
トでも1/32と1/48では違うカラー指示。調べるほどに混乱したから、ここは
C308で塗装しました。
インパネの塗装はハセガワ1/48と同じノリで。スイッチ類は適当にところどこ
ろ赤を塗ったりすると良いアクセントになるようです。まあ今回もキャノピー閉じるから適当で良いんじゃないスかね。
本キットでは1/32らしくバルカン砲が再現され、アクセスパネルを
開けて内部を見れるようになっています。私は「閉じる派」なのでバルカン砲は省略。閉じる場合に注意したいのは、いい加減に組むと、パネルがツギハギになって非常にみっともないで
す。なので各パーツはゲートを丁寧に処理し、胴体側と何度も「合い」を確認します。幸いなことにパーツの寸法精度は良くてスキマや段差は少ないです。
パ
ネルが胴体にツライチになるように注意しながら接着します。バルカン砲口カバーは裏からステンレステープで固定。とにかくツライチに、自然な感じで繋がる
ように
神経を使います。ベストな位置で固定できたら後はスキマを溶きパテで処理します。バルカン砲カバーの膨らみは、前後共にこんなにクッキリとポッコリしてい
ないようですが、
今回は修正なし。
胴体パネルラインは基本的に凸モールド。そして部分的には凹モールドです。もっとも量産型とかなり異なります。気になる人は修正を兼ねて彫り直しでしょうね。ただし元から有る凹モールドと同じ具合に彫らないと違和感が出るから、彫り直すにしても厄介なのです。
今回はパネル追加とか彫り直しは無し。ただし元の凹
モールドはやたら彫りが深い
ので、溶きパテで少し埋め、彫りを浅くしてみました。
ノーズコーンです。内部にはレーダーが再現されています。が、「閉じ
る派」としてはここも無視。それよりも、ノーズコーン表面はツルツル仕上げで、F-16の特徴的な電撃防止帯が有りません。これだけは我慢できなかったので追加工作することにします。ちなみに冒頭で紹介した限定08193のキットではメタルインレットで再現するようです。アフターパーツで有ればよいのですが・・・・。
電撃防止帯の再現法は人それぞれで、模型誌では細切りのテープ類や伸ばしランナー、真鍮線で追加する場合が多いようです。今回はスレンレステープやら真鍮
線やらと試行錯誤した末にマスキングテープ細切りにて対応。貼り付け位置は同社
の1/48や限定08193のキット、MA誌83年5月臨時増刊の折り込み図面などを参考にしました。
細
切りのマスキングテープはヘナヘナなので、大工用具「墨ツボ」の要領でピンと張って貼り付けました。これで真直ぐになります。貼り付けおわったらサフを吹
いてオーバーコートしておきます。お好みでAOAセンサーを虫ピンに置き換えたり、菱形のモールドを追加すれば良いと思います。
エアインテーク・ダクトは上下分割です。内部の継ぎ目は、細棒にペー
パーを巻き付けたもので均すのが一般的。ただし、場所が場所だし、合い自体が良いから、処理してもしなくても見栄えには大差ないと思います。「努力の割に効果は少ない」典型例のような箇所ですな。てなわけで今回は内部の分割線は処理しませんでし
た。
エアインテークASSYです。金型抜きの関係でしょうか、主脚扉前部にあ
るECSダクトが本キットでは省略されています(赤矢印箇所)。気になる人は1/48キットや図面を参考にくり抜いて追加したら良いと思います。今回はパ
ス。C型の場合
はカバーが付いているので、自作するなりタミヤのキットのC部品23番パーツをトレードするのが良いでしょう。他にも省略箇所があると思います。なにしろ
古い、ですから
ね。
キャ
ノピーもキチンとΩ型です。お約束のパーティングラインが入っています。ここは普通にヤスリととコンパウンドで処理すればOK。インスト指示ではA型の場
合はクリアーのままだけど、たしかF-16ってキャノピーにスモーク入ってましたよね・・・。迷ったあげく、前キャノピーのみ薄いエナメルの黒とブラウンをまぜた色で遠目に吹いてみました。ちょっとマダラになったけど、深追いは禁物です。
主翼後端は、放電索がモールドされています。この手の箇所は、真鍮線など
で置き換えるのが定石。とはいえ無理に置き換えることも無いでしょう。翼端パイロンもあるので大して作業性は変わらないです。せっかくメーカーがモールド
してくれたのを切り飛ばすのも何
だし、第一、真鍮線刺さったら嫌ですからね。少し注意すれば良いだけの事です。
水平尾翼は、ウエルドラインが多くてヤな感じ。ここは
凸モールドをマスキングテープで保護してスポンジヤスリで均します。尾翼類のパーツってウェルドラインが
入っているキット多いですね・・・。取りつけピンは抜け落ち防止のためにキノコ型になっています。これは塗装後に取り付けたいから、ピンを棒状に加工しま
す。
機体を組み上ました。オールドキットにも関わらず合い
はとても良いです。同社1/48と同様にスラスラ組めてしまいます。ハセガワの古い1/32は合いが悪いイメージだから(零戦52型丙とか)、これは助かります。今回は凸モールドをなるべく潰したくないので、接着剤のはみ出しにいつも以上に神経をつかいます。一応、
主翼付け根は溶きパテで処理(殆どスキマありませんが)。エアブレーキも閉で処理。
今回は単調にならないように、パネルラインに沿ってシャドウを掛けて
みました。かなり適当です・・・。
一通り塗装が終わりました。このサイズのなると一日作業です。塗装はいつもの3色迷彩。A型なのでC型と
は若干パターンが異なります。けど基本は一緒。1/48や1/72と同じノリでOKです。F-16も都合4機目かあ〜。塗り過ぎてせっかく掛けたシャドウが良く判んなくなってしまいまし
た・・・。
エンジンノズルです。金型抜きの関係で、凹凸は控えめでイマイチな出来ですかね。まあ他キットからトレードするほどのことは無いとおもいます。それっぽく塗ればOK。NO PUSHのデカールは1/32でも健在。相変わ
らずめんどくさいです。
ウェポン、増槽類です。1/32となるとこれらも手間がかかります。
マルチエジェクターラックはA型にはそぐわない気がしますが、まあ良いですかね。
不要パーツのスマート爆弾(KMU-351B)も何かもったいないからついでに作ってしまいました。パイロンはこれでいいのだろうか。。。?まあ遊びだか
らOKOK。サイドワインダーが一部ヒケてます。あと増槽の黒帯はデカールの長さが少しおかしいようです。
デカールはテキサスANGのAF80-560にしました。実機はADF型に改造されたあと引退してモスボールされているようです。仕上げにツヤ消しのクリ
アーを吹いて完成になります。胴体下面後部のオレンジラインのデカールは少し長さが足りませんので、一部塗装しました。それと、インストのデカール指示は
細かい部分が少々判り難いです。
〜完成〜
完
成したハセガワの1/32F-16A。作ってみた感想としては、大キットにも関わらずあっけなく完成・・・。まるで1/48のノリでした。大体にしてF-
16は小
型機なので1/48のイーグルと同じくらいの大きさになります。にしても、ここまで組み易いとは思いませんでした。前回のエレールF-4F(4/15完
成)の翌日に仕掛ったから製作期間は2週間弱。かなり順調でした。ちなみに完成品の重量は250g位。結構あります。
実の所を言うと、、私、本キットはディテールがイマイチである事を以前から残念がっていました。ただ、こうして完成してみると違和感がないというか、案外
悪くない。そういえば、MA誌増刊「空モデルテクニック」の中で「プラモなんてのは
多少出来が甘くても、きれいに色塗ってデカール貼ればさせればそこそこ見れる」というニュアンスの記述がありました。確かにそうなのか
もしれません。
もちろん競合であるタミヤはあらゆる面で最高を狙った傑作キットではあるんだけど、ハセガワがダメかっていうとそんなことは無くて、むしろストレート製作で比較した場合、こっちの方が作り易いと思います。そもそも余程のプラモ名人ならいざしらず、素人レベルの製作ならハセガワでもタミヤでも出来栄えに大差は無いと思います。タミヤは後発だから出来が良いのは当たり前。むしろハセガワ製は基本設計が1970年代にも関わらず組
み易かったことは素直に評価しても良いでしょう。
個
人的には、ディティールにこだわらない人や、逆にスジボリその他の修正工作に自信のある人にはこのキットをおススメでしょうか。またタミヤとの作り比べも楽しそうです。ゴージャスなタミヤと違った不思議な親しみ易さっていうか、気楽さが本キットの魅力なのかと。たまには肩の力を抜いてこのよう
なオールドキットと向き合うってものオツなもんでしょうな。これは何個か作りたい。次はC型かな。
今あえて、見直されて良いキットだと思います。
今回の反省点
@シャドウをもう少し強めにしておけば良かったかもしれません。
Aノズル部のNO PUSHのデカールが一枚どこかにすっ飛んでし
まいました。まぁ仕方ないです。
2013年4月28日完成。
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